
2010年も押し詰まった26日、「孫(甥)の顔を見に行く」という家内と娘を送って、朝早く空港に赴いた。送り届けて「さて、どうしよう」と考えても丸一日何の予定もない。ドライブ気分でぷらぷら車を走らせると湧水町に着いた。橋の袂で小用のついでにナビを覗き込むと、「栗野岳温泉」が目に入った。
「山中の温泉でゆったり昼風呂もええなぁ」
そう思って、行き先を栗野岳温泉に指定した。地理には不案内だが、こういう時ナビゲーターが役に立つ。
大口に向かって少し行ったところで右に曲がるよう催促された。しばらく行くと山道に入る。杉やヒバの林の中の道を登って行く。離合も難しい狭い道路が林の中を延々と続いている。20分も登っただろうか。
「この付近、目的地です」
「こんな山中に…」と目を泳がせると左手に旅館風の建物が建っている。道路脇の駐車場に車を停めた。
車を出て振り仰ぐと目の前に温泉旅館「南洲館」本館が仰角で立っていた。その後方には噴気がもくもくあがっている。
受付で「風呂に入れますか」と聞くと、「200円です」との無愛想な答え。入口の案内板で三つの温泉があると知っていたので、「全部の温泉に入りたいのだが」と重ねて聞くと「500円です」という。「勝手に入ったらどうなんや」という感じで商売っ気が感じられない。心のこもらない愛想笑いも鼻につくが、こうケンモホロロでは客が付かないだろうと心配になる。入口に鍵があるわけでもなく、見張りがいるわけでもない。これではちゃっかりお金を払わずに入ることも可能ではないか。こういうところ秘湯の条件を満たしている。別棟の入口には「日本秘湯を守る会」という提灯が架っていた。

まず、明礬緑礬泉の「竹之湯」に向った。看板にある八幡地獄を先に見ようと、道なき径を登ってみた。急坂を登って行くと林の奥から硫黄の匂いが漂ってくる。林を抜けると地獄だった。あちことの噴気孔から白い煙が噴出している。足元で水がぐらぐら煮えたぎっている。この地獄の広さは、登別にも匹敵する大きさだという。


竹之湯はやや緑がかった白濁した温泉である。ぬるぬるした感触は明礬泥湯のせいだろう。足にぬゅるっと灰色の泥がさわる。奥に、沢から直接引いたと思われるちょいとぬるめの打たせ湯が白い筋になっていた。
上がり湯も水道もないので、明礬温泉の効能をそのまま身体に染み込ませて、蒸し風呂に向かった。途中左に南洲翁遊猟碑が立っている。かつて西郷隆盛が兎狩りをして温泉に浸ったという。周りにスメ(噴気孔)があり蒸し釜がある。ここで作った鶏の丸蒸しはこの温泉の名物である。

どの風呂も貸し切り状態、誰もいない。二つの浴槽があり、奥にドアが二つある。低い扉を引いて中にかがんで入るとウエットサウナ。少しいると、じわっと汗が吹き出てくる。
桜湯は洗い場が広い。水も出る。硫黄泉というとおり硫黄の匂いが鼻に付く。やや透明で、白い湯の花がいっぱい漂っている。ただしここも閑古鳥、私の入浴中誰も入ってこなかった。やっぱり秘湯です。
久しぶりに鄙びた温泉情緒を満喫して帰路についた。この温泉をもう少し登るとレクリエーション村やアートの森・キャンプ村などがある。
栗野岳温泉住 所 鹿児島県姶良郡湧水町木場
交 通 JR肥薩線栗野駅からタクシーで15分
温泉が自噴する八幡地獄を抱えた栗野岳の一軒宿。本館とは別に三つの
浴場棟があり、泥湯と呼ばれる「竹の湯」、硫黄泉の「桜湯」、ラジウ
ム泉の「蒸し湯」、飲用のラムネ泉をもつ。
源泉は3種類ある。
* 竹の湯 o 泉質 - 酸性・含鉄(II、III)-アンモニア-硫酸塩泉(明礬緑礬泉)
o 強酸性の白濁した湯である。浴槽底には白い湯泥が貯まっている。
強酸性のため加水している。
* 桜 湯 o 酸性単純硫黄泉
o わずかに白濁した湯。弱酸性。源泉温度が高いため加水している。
* 蒸し湯 o 泉質 - 酸性単純硫黄泉(ラジウム含有)
o 90℃の源泉を利用した蒸し風呂。
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